この島には「マツタケ」という茸が生えてるらしい。
その茸はアカマツとかいう木の根に生えるらしく、いい香りでウマい。
つまり随分高く売れる。
てぇのがあの魔女の言った事なのだが…
だからって何でこんなうっそうとした森ん中にほおりこまれなきゃならんのか。
しかも、テメェの誕生日に。





『たかが、されど。』






最近財政難を極めているゴーイングメリー号の航海士、ナミは地図と本を手ににやりと笑った。
「皆聞いて!いい事思いついたわ!!」
全員をキッチンへと呼び寄せる。
これまで彼女の提案する「策」によって確かに現状は打開されて来た。
が、それは手段を選ばない。
つまりろくな事がないのだ。
身を以って知るところの呼び寄せられた彼らはそろって嫌な顔をした。
「ちょっとぉ〜何よその顔?!もっと嬉しそうにしなさいよっ!!」
この貧乏航海がなんとかなんのよ?!

それはそれで非常に有難い。
けれど嬉しそうになんて、無理なおハナシで。
そりゃあ本人はいいだろうとも。
絶対にその策に参加しないのだから。
「元はと言えばアンタのせいなのよっ?!」
ビシッと指差した先の船長を全員がジロリと睨みつける。
「ナミさんのおっしゃる通りだ。」
このクソゴムめ!
言いながら、コックは舌打ちしつつ集まった面々にお茶を出した。
今睨みつけたところの彼にも。
いろいろトラブルメーカーなこの船長。
先日立ち寄った島にて入った店で大量に飲み食いしたあげく、騒動を起こしそこいら中破壊しまくったのだ。
おかけで遅れてそこへ到着したナミが激怒しながらも支払った。
もちろん値切ったが。
それから続く貧乏航海。
当初は考えるのも面倒くさいと放置していた航海士だが、長引く財政難に辛抱たまらんと思索にふけった。
その結果。
「これから上陸する島の森にはアカマツがあります!」
声も高らかに腰に手を当て言い放つ彼女に集中するだから?な視線。
「あら?何そのそれがどうした的な顔。」
不服そうなナミに
「だって、なぁ?」
と隣のチョッパーに声を掛けるウソップ。
振られた青っ鼻の船医もウンと頷く。
「バッカねぇ〜アンタたち。アカマツと言えばマツタケでしょ!!」
どんな方程式なのだろうか。

そんな成り行きにて島にほうり出された緑頭の三刀流腹巻剣士は途方に暮れていた。
見渡す限り生い茂る草木。
一体何をどうしろと言うのか。
とりあえず、唯一の救いはコレだろうか。
「オイ。ちゃんとついて来いよ迷子なんぞクソ剣士。」
救いと言うにはあまりにもなこの言い草だがひょこひょこ前方を歩く黄色い頭。
「うるせぇ。んな簡単に迷ってたまるか。」

ゾロは自分を分かっていなかった。
まだまだ修行が足りないようだ。
一緒にほおり出された足癖も口も悪い巻き眉毛のコック、サンジは大きな溜息を吐き両手をポケットへ突っ込んだ。
「なんでこんな組み合わせなんだよナミさぁ〜ん…」
自らの不幸を嘆いている。
何故この組み合わせかなんて簡単な事だ。
この島は無人の上遠浅。
要するに船から泳がなければ上陸出来ない。
となるとメンバーの中で上陸可能なのはゾロ、サンジ、ウソップ、ナミの四名に絞られる。
後は消去法。
狙撃手はいつものごとく「島に上陸してはいけない病」にかかったと騒ぎ出し、マツタケ狩りどころではない状態。
そんな病が通るところ不思議と言えば不思議なのだがたいてい無視をくらうソレは今回に限り通った。
誰が通したかは言わずと知れる。
そして問題のその人物はと言えば自ら動くなんて事はまずありえない。
「か弱いアタシに何がいるか分かんないそんなとこに行けなんて言わないわよねぇ?」
すんなり回避。
残り二名。
片方に迷子癖有りと来ればセットで派遣するしかなかろう。
おまけに人数、多いに越した事はない。
指令であるナミに
「今日誕生日なんだが…」
そんな日に何をさせるのか。
無駄かと思いつつも控えめに、訴えてはみたがやっぱり無駄だった。
「何言ってんの。先立つもんがなきゃ祝いどころじゃないわよちゃっちゃと働いてちょうだい。」
あっさり却下。
「とにかくデッカイの探して来てよ?!」
譲歩する様子など微塵もない。
普段ならとにかく面倒な事は避けたいと食い下がるところだが今回は別だ。
コックとセット。
最近何かと気になるグル眉と二人きりなのはなんとなく気分がいい。
が、そう思えたのは最初だけだった。
道すがら、アレは違うかコレは違うかと茸を発見しては言ってみるがサンジは
「テメェはアホか。どう見たって形違うだろが。やる気あんのか?!」
なんてさんざ暴言を浴びせ、あぁ?と顎を上げる。
何様のつもりだこのクソコック。
腹が立つったらない。
空腹も手伝っていい加減頭にきたゾロはそろそろ何か言い返してやろうと構えたが、狙ったように振り返られ言葉を呑み込んだ。
「オイ毬藻、ハラ減ってねぇか。」
朝早くに上陸し、それからずっと歩き詰めで太陽はすっかり真上。
減ってるに決まっている。
顔に出てしまったのだろうかサンジは返事を待たずに足を止め、前方を指差した。
「見ろ。誰か住んでたみてぇだぜ?」
白い指先が指す先には小屋があった。
ドアや窓には蔦が絡み付いていて、今は無人であろう事が予想される。
て事は、だ。
コックは見事に蔦の絡まるドアの前まで歩み寄り、おもむろに足を振り上げた。

『バキッ』

「どうせ鍵も錆びてんだろ。悪ぃがこれでお邪魔しようぜ。」
休憩休憩。
古くなり腐っていたドアは見事に粉砕された。
「…足癖悪ぃな。」
欠片を足で横に避けながら中へと進む背中へ呟いたが、うまい具合に届かなかったようだ。
いらぬ口論はまぬがれた。
「おっ、立派なキッチンあるじゃねぇか!!」
嬉しそうな声に、足元へ落としていた視線をあげるとコックがレードルを握っている。
「それ、汚ねぇんじゃねぇのか…」
思った事をそのまま言った剣士に向かってサンジはニッと笑って見せた。
「テメェにしちゃあ珍しく常識的じゃねぇか。けどさっき外見て来なかったのか?」
随分機嫌の良さそうな様子に一瞬目を奪われ、我に返る。
「外ってなんだ。」
「井戸、あったろ。」
洗えばいい、と。
どうやら水はあるらしい。
けれど。
「水はいいが肝心の食料がねぇぞ。」
キッチンがあったところで何が出来るのか。
だがコックは巻いた片眉をひょいと上げた。
「なぁに言ってやがる!そこんとこオレ様にぬかりあると思うか?!」
背負っていた袋の中身を得意げにテーブルの上に出して見せる。
「な?」
いつの間に集めたのか大量の山菜と茸。
「道すがら摂って来た。マツタケは全部テメェに持たしてあんだろ?だからこっちのは全部食っていい。」
ゾロがマツタケ探しに夢中になっている間、彼は自分たちの食事を考え行動していたのだ。
まったく頭が下がる。
食事を摂らないまま一日山道は流石にキツイ。
日頃目に付きにくい部分ではあるが、こういう所は尊敬に値すると素直に思った。
ので、口にする。
「まったくぬかりねぇ。スゲぇとこだな。」
するっと出たその言葉はひどくサンジを喜ばせたようで、タバコを咥えた口元がふにゃりと緩んだ。
「なっ、なんだよ珍しいな。ヘンなもんでも食ったのか?」
言いながら背を向けると口調に反して軽い足取りにて外へ。






もぉなんとコメントして良いやら…(滝汗)
ドウしようねぇ旦那がマツタケ狩っちゃってルよ…


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