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「サンジ君何か欲しいものある?」
始まりはナミのそんな一言からだった。
彼の誕生日はもう過ぎてしまったが、せっかく陸が近いので何かプレゼントしたいとそんな事を言い出したのだ。
「うん?特にないよ。」
さらりと返すコックに彼女は更に食い下がる。
「そんな事ないでしょ?何でもいいから言ってみてよ。」
サンジは困って巻いた眉を下げた。
「う〜ん…じゃあナミさんの欲しいものが欲しいかな。」
彼なりになんとかひねり出した回答だったのだろう。
だが。
「そんなの駄目よ!それ、サンジ君の欲しいものじゃないじゃない…サンジ君が嬉しいものでなきゃ!」
ナミも困ったように眉を下げる。
「じゃあ…明日には島に着くと思うから、それまでに考えて?ね?」
彼女なりの妥協策だったのだろう。
それだけ言ってにっこり笑うと読みかけの本を片手に船室へと引き上げて行った。
その会話をイラつきながら聞いていた男が一人…
キッチンの床に座り込み、壁にもたれて眠っていた剣士だ。
実は途中から目が覚めていた。
そして会話の内容にひどく苛立ちを覚え、眉間に皺を寄せる。
今の会話で苛立つ内容などあったろうかと自ら思うのだがどうにも苛立った。
ので顔を上げ、席に着き煙草に火を点けたコックに問い掛ける。
「オイ。本当にねぇのか。欲しいモン。」
「なんだ聞いてたのか毬藻。」
彼はゆっくり煙を吐き出し、驚いたように目を見開いた。
「質問に答えろ。」
「…ねぇよ。ホントに。」
金で買えるものはな。
小さく溜息をつき目を伏せる。
サンジが欲しいものはお金ではけして買えない。
自分の努力で手に入れる事すら難しい。
そんなやっかいなシロモノだった。
「んだよ。テメェにゃ関係ねぇだろ?なんかあんのか?」
自分は何も欲しがらず、あげく相手を選ばず丸ごと与える。
それは女に限らずで、あれだけ野郎を鬱陶しがり邪険に扱っておきながら結果はどうだ?
結局与えているのだこの男は。
もちろん自分に対してもしかりなのだが。
「別に。…なんかテメェ見てっとイラつく。」
ゾロは吐き捨てるようにそう言うとキッチンを出て行ってしまった。
残されたコックはどうしようもない気分に自らの肩を抱き、俯く。

くどいようだが彼の欲しいものはお金ではけして買えない。
人の心はそんなもので、手に入らない。

キッチンを出た剣士は女部屋へ向かうナミを追いかけ彼女がドアを開け中へ入る直前捕まえる。
「サンジ君の欲しいもの?さっきの話聞いてたんでしょ?分かんないわよ。でも…」
航海士はうーんと俯き少し考え顔を上げた。
「そうねぇ、多分アタシ知ってるわ。」
にっこりと含みのある笑顔。
「言ってみろよ。」
たずねておきながらゾロは随分エラそうだ。
「は?聞いてどうすんのよ?」
もちろん彼女には教えてやる気などないが。
「どンくらいするもんなんだ?」
「何がよ。」
「金。」
ナミは盛大な溜息をついた。
「あのねぇ、お金で買えないから困ってんでしょ?アンタほんとに馬鹿よねぇ。」
しみじみ。
「じゃあなんでオマエは欲しいもの聞いてんだ。」
当然浮上する疑問。
馬鹿と称された事はとりあえず流した。
「お金で買えるものならアタシからプレゼントする事出来るでしょ?だから聞いてんの。お金でなんともならない方は残念ながらアタシにはどうにも出来ないわ。」
呆れつつ、答えてやる。
そして。
「ちょっとは頭使ったら?アンタにならなんとか出来るかもよ。」
たとえば普段絶対しないような事したげるとか、ね。
ふふんと鼻で笑って女部屋のドアをバタンと閉めた。
意味深な言葉を残し放置されたゾロは仕方なし考えてみる事にする。
元々ややこしい事を考えるのは苦手だ。
だがそれなりに考えて出した答えがまた…
あぁ、いただけない。

「背中流してやる。」
「ええっ?!」
その日の晩、キッチンの後片付けを済ませたサンジは遅い時間風呂場へと向かった。
ようやく一息と湯船につかったとたんの無断侵入。
なんだよ急にと驚いて見上げると、剣士はすでに上着を脱いでいた。
「なんで脱いでんだ?!」
「風呂に入るからだ。」
即答。
「えっ、ててテメェ、オレが入んの待ってたのか?!」
「おう。」
会話を続けながらもゾロは湯船につかるコックの目の前で腹巻を脱ぎ、ズボンに手をかける。
「オイ待て待て!背中流すのになんでマッパになる必要あんだ?!」
サンジはバシャと音を立てて湯船に手をかけ上半身をそこから乗り出す。
突然の侵入者は気に留めた様子もなくズボンを脱いだ。
そしてとりあえずの返事。
「だから言ってんだろ。風呂に入るからだ。」
何か問題あるか?と。
問題などサンジにすりゃあありまくりだ。
「どういうつもりだッ!!」
あまりの剣幕にここに至る過程を説明する事にしたゾロはマッパで湯船に歩み寄った。
「ナミに聞いたらテメェの欲しいもんは金で買えねぇって言われたから。」
だから奉仕しに来た。
確かにお金では手に入らない。
努力してもある意味難しい。

実はコックの欲しいものはこの怪しい侵入者だったから。

それにしたってあまりのこの仕打ち。
新手の嫌がらせかと本気で考えた。
「勘弁してくれよ…」
いきなりマッパとかこの変態め。
ぐったりと項垂れ湯船の外へと投げ出された細い手首をふいに掴まれる。
ゾロはおかまいなしにその手を引いて戸惑う彼を立ち上がらせた。
「とにかく出て来い。そこじゃ背中流せねぇだろ。」
多分、何を言っても無駄だ。
サンジは風呂場で暴れても仕方ないと諦め、されるがままになった。
「そこに立て。」
偉そうに命令形。
それにムッとしつつ、舌打ちするが従う。
ガシガシと背中を擦る手が思いのほか優しくてなんだか気持ちがいい。
「ふぅん…意外と上手ぇじゃねぇか。」
なんとなく、力任せに擦られてしまいそうな印象があったもんで。
自然そんな言葉が口から出た。
「そうか。」
剣士は黙々とその白い背中を洗う。
さほど長い時間ではないはず。
だが居たたまれなさと妙に落ち着かない気分にやたら長く感じる。
サンジが振り返り、もういいからと言いかけたその時
「んじゃ次行くか。」
ゾロはにっと笑ってみせた。
「は?次ってなんだ?!」
いつの間にか洗うでなく背中を撫でていた手がわき腹をすべり前にまわる。
「え、ちょっ、ナニ?」
まっ裸で後ろから抱き込まれるようなとんでもない状態に動揺し揺れる金髪。
剣士はそれを無視して前にまわした手を遠慮なく胸元に這わす。
そして水滴をはじく白い項に唇を寄せた。
「ちょ…」
有無を言わせず胸元に這わせた大きな掌はそのまま下腹部へと滑り降りる。
「あッ…」
不本意にも熱を持ち始めたソコを握り込まれてとんでもない声が出た。
慌てて自らの口を両手で押さえるがもう遅い。
「へぇ?」
気を良くしたゾロはどう作為を加えてやろうかと再度項に噛み付いた。
その時。
バンッと大きく一度、扉を叩く音。
「ちょっとぉ〜!まだ?!アタシ入りたいんだけどっ!!」
外ではにんまり笑う航海士。
「「…」」


ハイ、時間切れ時間切れ。


「他人のお膳立てでどうこうしようなんて甘い甘い!!」





end



どうにもコックの誕生日を祝い足りなかったらしく(ええ?)またさり気にプレゼント系書いてしまいマシた。
今度はものでなく奉仕(?)にて。
しかしまぁこれまたフザケタ内容に…(苦笑)
風呂場に侵入とかどういうつもりか。
そしてナミさん意地悪デス(笑)
てかいい加減叱られそうデスねこの展開(汗)



ゾロ誕部屋に続編「Crisis?」をUP致しマシた。



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