「やっぱり『コイ』…なんだろうか。」




Crisis?





小さく呟き、両手で自身の金の髪をぐちゃぐちゃに掻き回す。
「ぐわぁ〜っ!!クソっぱずかしい台詞言わせやがってあンのクソマリモめっ!!!」
全身痒くなるっつーの!!
叫んでみるが、誰もそれを強要してなどいない。
自分で勝手に言ったのだ。
深夜に一人きりのキッチン。

彼、自称「プリンス」な金髪コックは。

半年ほど前、ナミに誕生日に欲しいものはないかとたずねられたサンジは「ない」と答えた。
が、本当に欲しいと思っていたのは同じ船にのる仲間。
のばすの腹巻三刀流剣士の心だった。
だいたい相手はむさ苦しい事この上ない野郎だと言うのに、その「心」が欲しいだなんてどうかしているのは彼自身よく分かっている。
その感情に不本意ながら名前がついてしまうなんて事も、よく分かっていた。
だがそれを認めるか認めないかは別だ。
と、本人思っていて、認めようが認めまいがそれは「恋」と呼ばれてしまうものなのに往生際が悪いったらない。
認めたら終わりだと変に危機感を持っている。
認めないも何も、もうとっくに終わっていたりするのだが重ねて言おう。
往生際が悪い。
それに関して考える事を放棄したサンジは思考を次へと移した。
なんと都合の良いオツムか。
そしてその時所望したそれが手に入ったのか?と言うと、実のところよく分からない。
『誕生日に何かしたい。』
とそう思ってくれた事は分かる。
つまり嫌われてはいない。
かと言って好かれているのかと問われれば微妙だ。
変態よろしく風呂場に乗り込んで背中を流すと申し出た剣士であったが、あれから何かあったかと言うと…
何もない。
そりゃもういっそ清々しいほど何もない。
敵襲やら嵐やらで日々はめまぐるしく、そんな場合でないにしろ、だ。
そこんとこどうなんだオイと心中でツッコんでみるが回答など出るはずもなくずーっと一人、悶々としている。
聞いてしまえば早いのかもしれないがそんな事聞けるわけがなかった。
自分で欲しがっておきながら認める事すら難しいと言うのに一体何を聞ける?
どういうつもりだったんだなんてとても言えない。
ぐるぐるとそんな答えの出ない事を考えているうちにいつの間にやらやって来る十一月十一日。

件のロロノア・ゾロ、その人の誕生日である。

のんびりしている場合ではない。
とりあえず、そのへんの事は後回しに何を贈るのかを思案する事にした。
もちろん誕生日の祝い、贈り物だ。
なんやかんやと言いつつも、やっぱりそこは押さえておきたいところ。
しかし何が一番嬉しいのか?
早速翌日から本人を観察してみたが、眠ってばかりで何がどうやらちっとも分かりゃしない。
バタバタと忙しいサンジはあまりじっくり腹巻男を観察してばかりもいられなかったのだが今回ばかりはと時間を割いた。
が、結果は先にも述べた通り本気で見事に寝てばっかだ。
何ひとつ分かりゃしない。
「そりゃあまぁ育つわな…」
呆れ気味に呟いてみるが、その時のコックの脳裏には光合成するマリモ。
映像マチガイ。
さておきぐずぐずしている場合ではないと仕方なし、本人に探りを入れる事に。
しかしそれもあえなく失敗。
会話を試みるとすぐに口喧嘩に発展してしまうからだ。
誰が悪いってサンジが悪いのだが。
いちいちからかうような口調になるもんだから。
照れ隠しにしたって激しすぎるそれは剣士に汲み取れと言っても無理な話でハイ、即口論。
尽く失敗を繰り返し、正面から挑むのを諦めたコックは作戦を練る事にした。
大袈裟な話だが本人的には結構切実である。
「遠まわしに聞く…う〜ん…遠まわし…」
結果、弾き出したのはあまりに考えすぎて脳が麻痺していたに違いない方法。
「よし、紙に書こう!!」
一般的にそれは『手紙』と呼ばれる代物。
自ら口にしないというだけで、どこいらへんが遠まわしなのかさっぱりだがサンジはオレ天才!と自身のレシピ用ノートを一枚破った。
そしてペンを握る。
「ええと…欲しいモノがあれば言え。と。」
さらさらと書き上げうんと頷き、なんだか得意気。
しかも内容遠まわしどころかこの上なくストレートかと思われる。
それならばいちいち書かなくても絶対に言った方が早い。
だがこの簡単な事がどうにも口に出来ないのだ。
たったこれだけを言うために、何故口喧嘩になるのかその方が不思議なのだが何をどうしてもそうなってしまう。
で、手紙もどきを用意したはいいが問題はこれをどうするか。
手渡すのでは遠まわしにならない。
いや今の時点ですでに遠まわしもクソもないのだが本人そこの部分には気付かずで、どうにか届ける手段を考える。
誰かに頼むか?
いやいやなんだか大事になりそうで嫌だ。
一人あれこれ考えては首を横に振る。
なんとも奇妙な光景で、ナミなど通りかかろうもんなら「ついにキた?」は確実である。

何か長い棒の先につけて渡す。
その棒を掴まれる恐れアリで却下。
どっかから釣竿で吊るす。
吊った糸をひっぱられる恐れアリで却下。
ヤツが見張り番の時見張り台に置いておく。

ラブレターみたいでスゴく嫌だから却下。

『欲しいモノがあれば言え。』
なんて書いておいて、それが自分からだと知られないようにしようとはどういう了見か。
意味が分からない。
例えばゾロに欲しいモノがあったとして、じゃあ一体誰にそれを言えと言うのか。
そのへんを全て無視にてだが、サンジはようやくいい方法を思いついた。
「そっか!投げりゃいんだ!!」
投げて様子を伺えばいい。
「しかし投げるっつってもな…」
まさかくしゃくしゃに丸めて投げるわけにもいかない。
そういう問題ではないと思われるが多分ゴミと間違えられる。
「…おっ、そうだ!!」
サンジはおもむろに紙を折りたたみ、何やら形を作り始めた。
出来上がったのは紙飛行機。
「これ飛ばしゃいんだ!」
オレってあったまいー!!

そうであろうか。
しかし今ここにはそれをツッコむ人物は一人もいなかった。
では早速とご機嫌なコックは剣士を探す。
予測をたて最初に向かった船尾、蜜柑畑への階段の横の壁にもたれて、ゾロはいた。
腕組みをしたままピクリとも動かず死んだように眠っている。
サンジは階段に隠れ、剣士に向かってすいと紙飛行機を飛ばした。
頭に直撃する寸前でわしっと掴んだ眠っているはずの男はおもむろに…

それを口へとほおりこんだ。


「♪白ヤギさんからお手紙着いた〜黒ヤギさんたら読まずに食べた〜…♪」
ぼそぼそと小声で歌ったサンジは暫しその場に固る。
数秒後。
「ってアホかぁ〜!!!!」
もしもしロロノアさん?
「なんっっっ…っで読まずに食うかっ!!」
ツッコんだところで無駄である。
だって寝ボケているのだから。
こっそり伺っている場合でない事に気付いたサンジは慌てて駆け寄り無遠慮に口の中へと手を突っ込んだ。
「このクソ腹巻何してやがるっ!!ペッ、しろペッ!!」
まるで子供に言い聞かせるような口調であわあわと背中をたたいたりなんやり。
ちょっとばかしもぐもぐやったらしい。
唾液でベトベトになった元紙飛行機を取り出し
「うわ、きったねぇなぁ〜…」
と摘み上げると再度階段の向こうへ隠れた。
慌てて様子を伺う。

何がスゴイってそれでも起きない剣士がスゴイ。
どうしようかとその場に座り込んだその時、
「…何やってんの?」
突然の頭上からの声に飛び上がりそうになったコックはそおっと声のした方を見上げた。
「ナッ、ナッ、ナミさん?!」
そこには蜜柑畑にしゃがみこみ、彼を見下ろす航海士。
紙飛行機を飛ばすあたりから一部始終を見ていたのだ。
「で、何してんの?」
にっこり。
ある意味一番見付かってはいけない人物に見付かってしまった。





ええと…
なんでかワタクシの書くコックはすごくユルイ感じになってしますマス(汗)
そして何故か旦那もコウ。
あれ〜?(汗)


→next                                                 →2005ゾロ誕
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送