「ふぅん…それであんな事してたわけ。」
普通に言ってはみるがナミにしてみりゃおかしくて仕方ない。
「アタシには話せないの?」
と泣き落としで洗いざらい吐かせた彼女は彼らの互いの事情をよく知っている。
それ故じたばたする様がなんともオカシイ。
「あのっ、ナミさんはクソ剣士になにか用意してるんですか?」
参考までにと聞いてみたが、彼女の口からはやっぱりな回答が。
「するわけないじゃな〜い!」
バシッと彼の肩を叩き
「まぁ利子くらいは少しまけたげてもいいかしら。」
その程度。
と笑い飛ばす。
ここまでいろいろバラしてしまって、今更隠す事もないかと諦めたもうどうにもならないサンジは
「…クソ剣士の欲しいものってなんだと思います?」
眉を下げ、にやにや笑う航海士に助けを求めた。
「あら、サンジ君にしかあげれないものじゃない?」
即答。
「はい?」
「とぼけないの。分かってるでしょ?半年ほど前のゾロのとった行動の理由。」
風呂場でのあの事件、だ。
「…」
確かにあれからゾロは何も言わないし行動しては来ないが意味は多分、分かる。
どういうつもりにせよとりあえず『弄らせろ』なんだろう。
思い出し、耳をうっすら赤くした。
「まぁ意地悪はこのくらいにしといたげるわ。本人に聞いてみなさいよ。多分言うと思うわよ?」
ただし、もう逃げ場はなくなるけどね。
そこの部分は流石に言わない。
今尻込みさせるような事言ったら今度こそ切羽詰まったゾロに斬られちゃうわと。

キッチンへと移動しての会話を終えたサンジは、意を決して剣士のところへ向かった。

そして再度船尾。
先ほどあれだけしても起きなかったゾロは目を覚ましていた。
ぼんやりと空を眺めている。
まずなんと声を掛けて良いものか分からず立ち止まると、なんか用かと鋭い視線が向けられた。
「あのよ、オマエ…欲しいもんとか、ねぇのか。」
随分唐突だがここは直球勝負と口にする。
言われた方にすりゃ唐突どころのお話ではない。
おまけに欲しいもの…と言われても。
「…」
なんと答えればいいものか。
黙られると居たたまれないサンジは相手の言葉を待たず、早口で捲し立てた。
「黙んなよ!ホラ、なんかあるだろが。メッ、メシのリクエストとか、飲んでみてぇ酒だとかっっ!!あっ、でもテメェが振り回してる串団子の錘増やせっても無理だぞ?ナミさんに止められてるからな!!」
ほとんど息継ぎナシ。
当たり前だが息が切れる。
ようやく黙った(黙らざるをえなくなった)コックに他人事のような顔を続けていた剣士はやれやれと口を開いた。
「いや、そういうモンは特にねぇ…」
メシは言わねぇでも作んだろ。
酒はテメェでなんとでも出来る。
錘?
ナミが止めてるってまぁそりゃそうだろうな。
実は先日手を滑らせて勢い良く落としてしまい甲板に傷をつけ、修理代がかかると怒り狂った航海士に制裁を加えられたところだ。
だがゾロは別にそうまでして錘が欲しいわけではない。
そこまで考えてふと気付き、最初の疑問に戻った。
「どうでもいいが、なんで急に欲しいもんなんだ。」
そう、そこ大事。
ちょっとばかし咳き込んだせいで上気した頬が更に色を増したのは気のせいだろうか。
サンジはボソッと
「だって誕生日…近ぇだろ。」
明後日の方向に呟いた。
ゾロに言わせればそういう顔をするからイケナイ。
なのだがそんなもの、本人が見れるはずもなけりゃあ気付くわけもない。
「よし分かった。じゃあオマエ、オレと同じ事しろ。」
いきなり立ち上がり、ぐいと細い腕を掴んだ。
一体何をどう分かったのか。
「は?」
ええと、いつの同じ事?
ひ、昼寝?
コックがボケた事を考えている間も掴まれた腕はぐいぐい引っ張られる。
散歩に誘う犬のようだ。
「背中流せ。」
「え?」
そんな風に見えてちいさく笑ってしまったコックを
「行くぞ。」
ゾロは更に引っ張って立たせた。
いやいや今からですか?
サンジは動揺しまくりで言葉が口から出て来ない。
イキナリか?!
言いたいのにされるがままに風呂場へと引っ張られる。

ささやかな抵抗も虚しく到着したソコの、外界と隔絶するようなそのドアはバタンと音をたて閉められた。

「ヤベェ〜もるモルもる〜!!」
どうにも下品な表現をしつつ、分かりやすくもその場所のドアを開けようとした狙撃手に容赦ないお言葉。
「あ、今そこ使用中だから。ダメ。」
声の主はいつの間にか付近に陣取り静かに読書中、の航海士。
視線は紙面に落としたまましらっと。
「はぁ?何言ってんだ誰が使用中だよ!!」
切羽詰った感じのウソップはドタドタと足踏みしながら尋ねた。
どうでもいいから入らせてくれ。と。
「青い二人。」
「は?」
「とにかく今はダメ。あちらでどうぞ。」
ナミはにっこり笑って船尾を指差した。

鬼だ。
わけも分からず外でしろと言われ、本来なら文句の一つも言いたいところだが今はそうも言っていられない。
結構一刻を争う。
仕方なしその場を退散したウソップは慌てて船尾へと走った。
「ごめんねぇ〜ウソップ。今回は邪魔せずにおいたげるわゾロ。お代はもちろん請求するけど。」
胸元から小さなメモを取り出した航海士はさらさら何かを書き足す。

一体剣士の借金はいかほどに膨れ上がっているのだろうか。

その頃浴室にて食材さながらのコックはまさに料理されるのを待つ状態。
剣士の手がシャツのボタンを外しにかかる。
「まっ、待てよなんでテメェが脱がしてんだ?!」
「ん?気にすんな。」
気にするわっっ!!
「だいたいオレは背中流す為に連れて来られたんだろうが!なんで脱ぐ必要がある?!」
少し強めに言ってからサンジはハッとした。
ちょっと待て、嫌な予感。
なんだか似たようなやりとりがなかったろうか。
多分、前にも言われたどうにも返せないあ〜んな言葉が返るはず…
「風呂に入るからだ。」
やっぱり。
「テメェは風呂入んのに服着たまんまなのか。」
今しているのはそんな話ではないはず。
「いや脱ぐけどよ…」
なのに律儀に答えてしまう自分が憎い。
「じゃあ問題ねぇだろ。」
いや何が?!
問題ある!
ありますってば!!
思ったところで不思議な事に、声にはならない。
おまけにじたばた暴れてみるががっちり掴まれた腕が離れる気配は皆無。
そんなやりとりの間中、意外と器用に片手でせっせとボタンを外され気付いた時にはすっかりシャツを剥かれていた。
「なっ、何する気だよ?!」
慌てるサンジを無視し、剥いたそれを床にほおると今度はベルトに手をかける。
「さぁ、何だろうな。」
にやにや笑うゾロは一歩、白い痩身に近付いた。
「な、な、なんだそりゃ?!背中流すとか言ってなかったか?!」
なんで変わってんだ?!
ベルトにかかったデカイ手を必死で押し退けてみるがびくともしやしない。
マズイ。
なんとなくマズイぞ〜?と冷や汗をかきつつな彼が顔を上げると
「言ったっけか?」
けろっと、金茶の目が笑う。
「嵌めたな…」
睨みつけてみたが迫力など微塵もない。
すっかり晒された項まで赤く染めておいて、何を今更。



「随分待った。いい加減黙って食われておけ。」





結果的には互いに『欲しいもの』を手に入れているのだが知らず手中の現時点、それに気付くのはまだ先の話。





end





またビミョウな感じに終わってみマシた。
ってなんでビミョウにするか?!
…ごめんナサイ(涙)
おまけにゾロ誕と銘打っておいてメインコックじゃあ…
更にごめんナサイ(号泣)
今回はナミさん協力的デス(笑)
でもとばっちりなウソップにごめんなさい…
←謝ってばっかだ(汗)


→2005ゾロ誕
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