いきなりしらっと言い放つ男に絶句。
ええとつまり、さっきからの会話を繋げてみると、ですね。
風呂に入るのを待ってる→なんで?→今日は何日→十一月十一日→誕生日→だから何してもいい。一緒に入れ。

って
「んなわけねぇだろ!!」
叫ばれて当たり前だ。
何をどうしたらそんな事になるのだろうか。
何でも許されるなんてありえないだろう。
ものすごく都合のいい解釈だ。
だがコレには深ーい理由があった。
いや深いかどうかはこの際置いておいて、簡単に言うとまあある人物の入れ知恵だったりする。
彼女、ナミはにんまり笑って誕生祝いと称した宴会中、誕生日だしなんでも許してもらえるわよきっと。
「何かおねだりしてみたら?」
とのたまったのだ。
彼女にしては控えめに『きっと』と付け加えていたのだがそんな事。
聞いているわけがない。
「だから一緒に入れ。」
あげくまた命令。
都合良く素敵に歪曲にて『おねだり』ですらない。
「だから、って何だよ!何に対してだ?!」
本人の意思はまるっきり無視か。
もっともそんな事をこの腹巻男に問うたところで今更なのだが。
そして引く気などまるきりない。
サンジはとりあえず大きく深呼吸した。
「とにかく、落ち着け。オレ。」
口に出して言ってみる。
だからって悲しいかな現状何も変わらない。
怪しい事この上ないが暫し黙ったまま見詰めあってみた。
そう言えば多少聞こえはよかろうが、つまりにらみ合ってみた。
で、サンジは突然くるりと踵を返す。

よし、無視には無視だ!!

達したそんな結論。

いや気付け。
無視したところで好きに行動されるだけである事に。
要するに何の解決にもなっていない。
ただこの現状を一時的(しかも瞬間)に逃避しただけである。
なのに本人満足したようで、足取りも軽く風呂へと向かう。
当然ゾロは黙ってそれについて行くだけである。



「オイ…」
振り返るのがなんとなく恐ろしいサンジはそのままの姿勢ですぐ近くにいるであろう男に呼びかけた。
無視とかゆってなかったか。
だいたいこの存在感のカタマリに対して存在の無視を試みるなど無謀もいいところだ。
見事玉砕。
「なんだ。」
返事はすぐ後ろから返る。
予想に違わずやっぱりすぐ後ろから。
この状態のままスラックスに手をかけるのもなんだ(だって思う壺だ)とそろうり、振り返ってみた。
と、いきなり視界に飛び込む襷がけの傷。
「?!」
ゾロは彼の真後ろで通常装備の白シャツをガバリと脱いだところだった。
「何脱いでんだよ!!」
こうなる事など目に見えていたのに、予想出来たと言うのにそれでも驚いたサンジは激しく後悔した。
何故自分が入った後素早く風呂のドアを締め切らなかったのかと。
詰めが甘すぎる。
妙なところで存在を無視してしまった。
一方ゾロは
「いや、暑ぃなと思ってな。」
脱いでみた。
いけしゃあしゃあと。
「んなわけあるか!!ここは冬島付近だ!!」
しかも十一月。
さっきわざわざ確認したろう。
もっとマシな言い訳はないのか。
「風呂は今からオ・レ・が・入んだよ!あっちいってろ!!」
後追いする子供か。
思ったが言わない。
そしてもはや無視の無の字もない。
「オレの事は気にするな。」
イヤイヤイヤ。
「気にする、いや気になるわッ!!」
当然だ。
「いいからさっさと入れよ。」
何がいいのか。
ゾロは彼のスラックスに手をかけた。
手伝う気なのか。
「オイ、ちょっ…っ?!」
その時。
ダン、とドアが鈍い音を放った。
そしてそのノックらしきものの後

「ねぇ、コーヒーこぼしちゃったんだけど、入っていいかしら。」
早く洗わなきゃシミになっちゃう。

な、ナミの声にぎくりと固まる。
半裸で密着中の自分たち。
こんな状態で何の言い訳が出来ようか。
「えっ、ちょっ、ナミさん待って!」
恐ろしい事にドアには鍵がかかっていない。
慌てて投げる、待った。
「あら入浴中?マズかったかしら。」
「いやあの、まだだけどちょっと…っ」
ああ、ナミさんごめんなさいマズくはないのですがでもある意味とってもマズい状況です。
少々パニックな彼に対し、
「コック、」
小声で耳元、囁く男は
「別にいいじゃねぇか見られても。」
ちっとも悪びれない。
「いいわけあるかッッ!!」
思わず叫んで両手を口元へ。
まさに墓穴とはこの事だ。
「サンジ君?どうしたの?」
いかにも何も知りませんと尋ねているが、ドアの外ではほくそ笑む航海士。
腹巻剣士の考えそうな事など、お見通しだ。
確信犯。
「ちょっ、テメェ早くソレ、着やがれっ!!」
サンジはとにかくこの半裸状態だけでも何とか、とこれまた小声にて耳元。
無理矢理シャツを着せてみた。
ゾロに。
「入るわよ〜?」
い〜い?
なんて、なんとも意地の悪い。
直後ナミはドアを開けた。
間一髪。
「ごめんねぇ〜」
と何に対してだか言いながら、彼女は内部へと足を進める。
その手にはハンカチ。
「…服じゃねぇのか。」
だったら後にしろよ。
ゾロは壁にもたれ腕組みにて不機嫌も露に。
「あら、アンタもいたの。」
知っていたくせにさらり。
「ハンカチだってシミになんのよ?ヤじゃないの。ねぇサンジ君。」
「だっ、だよねぇ?」
ぎこちなく微笑む彼は上半身裸で、何故かゾロと対極の壁に張り付いていた。
「今からお風呂だったの?邪魔しちゃったわね。」
風呂の邪魔だろうかそれとも。

ハンカチを洗うナミの背後の壁、サンジは無言。
何をどうする事も、この場を立ち去る事さえ出来ず真っ白。
ゾロはこの後どうしてやろうかとそれぞれ別の事を考えながら続く沈黙。
そんな中キュッと蛇口からの水を止めたナミは、洗い終えたハンカチを絞りつつ口を開いた。

「ねぇゾロ。一応言っといてあげるけどそのシャツ…」

「…なんだ。」

「裏返しよ。」





end





なんか風呂ネタ多いデスよ?とかゆっちゃダメ(笑)
そしてやっぱり今回も祝われておりマセんねぇ旦那。
困っタな(笑)



→2006ゾロ誕
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