「オイ。」
背後からの地を這うそれに
「ハイィィい?!」
オレの声は裏返った。
上、敬語だ。








エモノ








そろうり振り返り目に入るのは不機嫌マックスな魔獣、いやロロノア・ゾロ。
なんでもいいからその殺気を仕舞え。
一瞬目が合ったが気付かなかった事にしよう。
うんそれがいい。
が、
「オマエを呼んでんだよウソップ。」

名指しだよ。
逃げられない。
「な、ナニか?」
ビクビク言葉を返すオレを知ってか知らずか、ゾロはフンと鼻を鳴らした。
そして偉そう(いつもの事だが)に言い放つ事には
「そげキングに用がある。」
はあ。
それで?
「呼べ。」

ああそう。
知ってて言ってるのね?
ワカリましたワカリましたよ。
早くしろオレは気が短いんだと言わんばかりな眉間の皺に逆らう事も出来ず、仕方なし倉庫へ向かった。
そして例のセットを探り出す。
セットと言っても面とマントだけだが。
今思えばあれだけの変装でバレねぇとかありえねぇだろ。
主に(と言ってもヤツらだけかと思われるが)ルフィ、チョッパー。
ありぇねぇ、とブツブツ言いながらマントを発見した瞬間、
「早くしろ。」
唸るような声が背を刺す。
入り口が背後だもんでその表情は見えない。
となると今度は無言の威圧じゃなく口にするわけな。
気配だけでジュウブン分かるっつーの。
とにかくコエェんだよコノヤロウ。
もちろん言わないが。
無言のまま仮面とマントを身に着けた。

コイツのここ数日に渡る不機嫌の最大の理由。
は、知りたくもないところだが安易に予想がつく。
ある人物にかまってもらえないからだ。
その人物は最近、キッチンに篭りっきり。
つまりちょっかいをかけても軽くあしらわれてしまうってわけでゾロ的にはおもしろくないところだろう。
その人物、サンジがそんな状態にあるのはある事の為なのだが本人にまだ言うなと脅…いや、口止めされてるもんで言わない。
チョッパーは不機嫌極まりないこの男に対して
「ケンカ出来なくてストレス発散出来ねぇんだなきっと。」
なんて純粋な目を向けるが違と思うぞ。
本当の理由をオレは知っている。
多分ナミやロビンも。


絶対サンジ欠乏症だ。


張り詰める空気にそろそろヤバイと思ったオレはコホンとひとつ咳払いをして振り返った。
もちろん仮面とマント装着済み。
で、
「ウソップ君に呼ばれたのだが、私に何か用かね?」
スイッチオン。
「…オマエ、百発百中なんだろ。」
なんの事?
「まあそうだが…」
「だよな。歌ってるくれぇだ。狙撃の島だしな。」
もしもしロロノアさんどうしちゃったんデスカ?
「頼みがある。」
たたたのみ?!
この男が頼みだってよ益々どうした?!
おかしな雰囲気に少々引き気味なオレを当然のごとく無視して、ゾロは船尾を指差した。
「アレ、撃ち抜け。」
え。めいれい?
あの、今頼みって…
ツッコみかけてやめる。
多分無駄だ。
諦めてヤツの指差す先に目をやった。
ら、遠方に酒の瓶。
「あー…ロロノア君?私に何をさせる気かな?」
いやまったく何故、としか。
「大丈夫だ。中身はねぇ。」

ネェなんの心配?
その上中身、どうなさったんですか。
サンジ君に蹴られますよ。
「ウム、そうではなく…」
言いかけた言葉はあっさり遮られた。
「いいから撃ち抜け。」
あー…
眉間の皺深くなっちゃいましたね。
ハイハイ分かりました。
オレは新兵器カブトを構え、軽く瓶を撃ち抜いてみせた。
ドウダ。
「おお。じゃあ次はアレだ。」
次にゾロが指差した先はナミの蜜柑畑。
まさか蜜柑撃ち抜けとか言わねぇよな?!
殺されるぞ。

オレが(オレか?!)

「ロ、ロロノア君いくらなんでもそれは…」
言いかけてまた遮られる。
「どこ見てやがる。枝に下げた瓶だ。」
よーく見ると確かに瓶が下げてある。
え、何、前以て準備してたって事か?
一体何をしたいんだか…
無言で溜め息なオレは再度カブトを構えた。
当然命中。
「スゲーもんだな。狙った獲物がどうとか、歌ってるだけある。」
さっきからやけに歌に拘るなぁオイ。
で、次は何をさせる気なんだ?
「ヨシ、コック呼べ。」
は?
「コック呼べ。」
もっかい言わねぇでも分かるわッ!!
そんで何がヨシ、か。
先ほどまでの不機嫌が嘘みてぇに霧散した。
が、邪魔してやらないで欲しい。

だってサンジは来たるロロノア・ゾロの誕生日に新しいメニューを、と試行錯誤中だったりするわけで。

「…ロロノア君一体何が、」
したいんだね。
とさえ言わせてもらえなかった。
「呼べ。」
いや胸座掴むとか反則じゃないかな?
そげキングはそんな脅しに…
「サササンジ君〜…!!」
負けるわコラァ!!
オレの震えた声はちゃんとサンジの耳に届いたらしい。
バァンとデカイ音をたてて、すぐにキッチンのドアが開いた。
「なんだよ邪魔すんな!!オレァ今忙しい!!!」

鬼ダ。
鬼がいる。
しかしその鬼の形相を見てにやりと口元を歪めたゾロはさらり、言った。
「次はアレだ。」
は?
ヤツの指差した先にはさきほどまでの『的』とは明らかに違うモノ。
「え、アレ、かな?」
ビミョウに指差す先をずらしてみる。
「チゲェ。アレだ。」
え?
「…あー…ロロノア君?本気かね?」
指差すのは仁王立ちにてお怒りなサンジ君。
「本気だ。」
あの、黄色くて巻いてるの、を?

いや、とりあえず死ぬから。
オレが(またオレ?!)

「百発百中なんだろ。」
え、何言ってんのこのひと。
「歌ってんじゃねぇか。」
いやいやだから。


「仕留めろ。」
そんでオレに寄越せ。



言わんとするところはなんとなくワカル。
が。

やってらんねぇな。
てか普通に無理だ。
(だいたい仕留めるだか射止めるだか今更じゃねぇか!)


「…無理。」


「やれ。」







どうなるウソップ、いやそげキング。







end





ゾロ誕三日前くらい…と思って下さ…
…っ…
くくくだらない〜(号泣)
これでもゾロサンとゆっていいデスか(汗)
そして思ったより長くなってしまいマシた…
くだらナイのに、くだらナイのに(涙)



→2006ゾロ誕
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