--- なぁ、盛大に祝ってくれるんじゃねぇのか? ---
「ゾロ、今日誕生日祝ってやる。珍しく夜に景気よくな」
デッキの上でいつになく陽気なコックが快晴の空の下そう俺に言った。
俺はいつもの調子で適当返事コイてトレーニング開始。
去年も一昨年も誕生日にゃ仲間に祝ってもらった俺だ、
また今年もああなるんだろうと思って適当返事。
わかってんだろ?いつも誕生日って主旨はとっくに最初っからなくて、
騒いで大量にメシ食って終わりだってことくらい。
まあおまえが一番大変なだけの夜になるってことだな、今年も。
どんな景気良くだか知らねえが、まあぶっ倒れない程度に頑張ってくれ。
秋空にしちゃ生温い風だ。
夏島があんのか?どこへ彷徨ってんだろうな。
まあいい。11月11日にゃ変わりない。
やっぱり辿り着いた島は夏島だった。
早々に面々は下船。
俺はどうにも暑そうな島なんで歩くのも躊躇った。
とりあえず眠りたいってことで。
「おい、ゾロ。おまえ、留守番か?」
「あぁ。それでいい」
「夜には出掛けるぞ、準備しとけ」
「おぉ?……おお」
準備?なんの?
いつも着の身着のままじゃねえか。
変なコト言うな。
不愉快だ、寝る。
なんで俺の誕生日にまで命令するんだ、あいつは。
おまえの誕生日んときゃ、それでも俺は色々してやっただろが。
みんなが寝静まった後、二人で近くの無人島へ泳いで渡って、
おまえがしたかった格好で全部やりてえこと叶えてやったっつーの。
すげえ喜びやがったくせに。
……おまえのご贔屓のレディたちには絶対見せらんねえ顔まで晒したくせに。
っへ、可愛げのねえやつだ。
寝る。
柑橘類のすこぶる激しく臭う島だった。
ナミのミカンの樹の臭いだけじゃねえな、これ。
なんだろうな、キライじゃねえにしても。
あ、ライムか。
おまえがよく俺の酒に入れるヤツか、これ。
月見酒してえな。
俺の生まれた月でこのあったかさは普通ねえもんな。
まったりゆっくりしてえな。
誕生日くらいな。
……ありえねえ、この船にいる以上。
目を覚ましたら、目の前に昼飯でも食ってるかのようなクルーの光景が。
「お目覚め?ゾロ。あんたを祝う会。今年はお昼間にやることにしたから」
……ってよー、もうやってんじゃねえか宴。
やっぱりか。
今年は相当適当だな、俺は寝ててもいいときたもんだ。
……あれ?コック、
「珍しく夜に景気よく」とか言ってなかったか?
あれ変更か?
……ま、その程度だな、この連中にかかりゃその程度だな。
うまい酒が昼間から飲めるならそれでいい。
夕方になるのは早いな。
西の空を真っ赤に染めて落ちてく夕陽。
その時間だけはどいつも静かに太陽を見送った。
「さてと。お開きお開き。ゾロ、お疲れさま。んじゃねー」
「ゾロ、たまにはゆっくりしろよな」
「大騒ぎだけはやめとけよ?島ちっせーから」
「大騒ぎするんなら俺も呼べよ?一応船長だからな、あ、いてててて!!何すんだー?ナミィ」
「いいのっ!!あんたが参加したらイイ感じで眠れなくなっちゃうでしょう、もうっ」
ん?なんだ?どういう空気だ、これ。
こいつらが何を言ってるのかがよくわからねえ。
俺はこの先なんか予定でも作らねえといけねえのか?
いや、あるのか?もう決定してる何かでもあんのか?
誰がんなこと決めてやがんだ?
「おら、バースデーマリモ。行くぞ」
「あぁ?」
おまえ、何処行く?
なんで俺の首根っこ掴む?
なんでだ?コケるコケる……あぶねーだろがっ。
……二人だけかよ。
……いいのかよ。
「おまえ、恥ずかしくねえのか、俺なんか誘い込んで」
「他の奴等の公認っつーか強制っつーか気ぃ利かせ過ぎっつーか」
スーツを肩にかけて歩くこの金髪野郎に俺は引っ張られ、
夏島の歓楽街らしき場所へと淡々と歩いてゆく。
「さあ、祝ってやる。何処へ行きたい?」
「んあぁ?おまえ、なぁ、盛大に祝ってくれるんじゃねえのか?」
「おまえ、オレ一人じゃ不満か?ぁあ?盛大におまえをオレが一人で祝ってやることに不満でもあんのか?」
目がマジだ。
逆らうと蹴りの32発くれえはすぐくるだろう。
振り返んな。キレんな。
「文句ねんなら黙って感激してろ。ばーか」
口の減らねえヤツだ。
不機嫌なんだか傲慢なんだかもわかりゃしねえ。
それでも美味そうな匂いのする店を自分で選び、
美味そうな酒を銘柄でちゃんとオーダーし、
5分に1度くらいは俺に話し掛けてくるおまえは、
いつもよりかはかなり珍しく盛大な接待だろうとは思う。
「イヤじゃなさそうな目つきだな、マリモくんよ」
「んあぁ?……酒うめえな」
「お、言い忘れてたな、誕生日オメ……ん?」
つい手が出ておまえの口を手のひらで押さえた。
この酒場ん中の雑音に混ぜて聴きたい台詞じゃねえ、と俺はふと思った。
「今言うな。どっか移動したら言え」
「宿か?……そこでも盛大にして欲しいのか?わがままだな、誕生日ともなると」
「んじゃ一生言ってくれんな。それでいい」
俺は面倒になってそう言い返し、酒を呷った。
それなのにな、こいつ、腕を引っ張ってな、
ここを出ようとばかりにだ、俺を立たせてだなぁ……。
「おまえに約束しちまったことを破るのは孫の代まで恨んで言い伝えてくれそうなんでな」
「なんだよ?言いたくねえなら言わなくていいと俺は言ったんだ、恨んだりなんかしねえだろ」
「するよ、おまえは絶対そういう所だけはする。……っていうか間違いなく恨むな、オレにだけは」
腕は引っ張られたままだ。
そしてこいつの選んだ宿へ急いで入ってゆく。
それは約束は早めに果たしたいからか?
それとも、やっと静かになって、
おまえだけで本当に盛大に祝ってくれる時間が来たからか?
「おい、……盛大過ぎて、身悶えんなよ?ついでに感激の連続で泣くなよ?」
「ばーか、誰が泣くか、コノヤ……、お、おまえ」
部屋を開けたらもう開始か、おまえの盛大は。
盛大はいいが、おまえのしたいやりたい放題かよ。
「俺にもさせろ、誕生日だぞ、俺の」
「だめだ」とか言いやがる、
こいつの盛大さはまず俺に好きなだけ尽くしてかららしい。
信じられねえくらいに丁寧に俺をもてなすおまえにびっくりだ。
「約束は果たす。絶対に盛大に祝ってやっから。任せろ、ゾロ。全部預けろ、オレに」
すっかり奪ってるその口に好き勝手なこと言われ放題の夜か?俺は。
まず風呂とかまず乾杯とかまず祝いの言葉とかねえのか、おまえは。
おまえの好きなレディには絶対口が裂けても言えないようなことを、
今夜もおまえは夢中んなって俺にしまくった。
長い航海しちゃいるが、
おまえのそんな顔や格好は初めて見た気がする。
……どこで知った?どこで覚えた?……俺とはどうなんだ?
そんな疑問質問、思いもよらず沢山浮かびやがる。
おい、サンジ。
誕生日にこの際のごとく、俺を溺れさせようって魂胆か?コレ。
「誕生日………、オメデトウな、ゾロ……オメデトウ、ゾロ」
何度も何度も俺の周囲1ミリあたりで囁き続けるおまえのバースデーメッセージ。
こんな男だったとは少々知ってはいたが、
こんなにまでな男だったとは今知ったな。
盛大、だな。確かに。
おまえだけが俺を祝う、盛大な誕生日会だ、確かに。
翌日。
昨日とはうってかわっての大雨。
肌寒い朝だった。
俺たちはあんな夜の翌日が故にまったりとした身体で寄り添い覚醒してゆく。
あんなに積極的だった男も今は隣りで猫のようにうずくまって眠っている。
疲れたんだろうな、盛大だった上に俺もアンコールしまくったからな。
撫でてやった。髪から首筋から背中から。
「ゾロ……孫の代まで憶えてろよ、昨日のオレの祝い」
「んあぁ?……さあな」
「約束だろが、おまえは憶えておいて、いつまでも思い出せ。オレが最高だったって」
「おまえの大好きなレディの前でしゃらぁっと語ってくれってか?」
「すんな。傷つく。オレが」
「んじゃ、何処ですんだ?覚えてても話す場所がねんじゃ記憶する必要もねえじゃねえか」
「……また来年もこうやってやってやっから、そん時話すんだよ、ばーか」
「……?!……」
「オレに話せ。何度でも話せ。何度でも聴いてやっからー」
俺が撫でたせいで乱れたおまえの金髪から覗く目、傲慢そうな色艶しやがって。
「どうでもいいが、誕生日は過ぎた。おまえが今度はオレにご機嫌とれ。船に戻るまで」
「んあぁ?」
やっぱりか、やっぱりか。
そうかとは思ってはいたが。
この後食材持ちの係にされ、物凄い量を両肩に背負わされ船に戻った。
昨日の夜と同じ人間とはまったく思えねえ、鬼畜野郎が!!
「ねえ〜ゾロぉ。盛大に祝ってもらったぁ?」
「んあぁ?……まあまあじゃねえか」
「まあまあだとぉ?!おら、もっかい言ってみろ、決闘だっ!!」
「いい度胸だ、今日こそおまえを正しい奈落の底へと落としてやるっ!!」
「あ〜あ、始まった始まった……こっちの喧嘩の方が盛大じゃないよーもう」
「おっ!ゾロとサンジ、今回はマジかぁ?見物だなぁ〜あはははは!!!」
船の上じゃあこんなもんだ、俺たちは。
これはこれで盛大に喧嘩上等でやってやろうじゃねえか、な?エロコック。
同じく「凌駕煩悩乱レ咲キ」様より『W.A-Side』の八木橋様の作品をいただいてまいりマシたv
「バースデーマリモ」って(爆笑)
そっか公認かぁ〜vvv
旦那が初めて見たところのそんな顔や格好を詳しく聞いてみたいデス。←やっぱりオヤジ。
どんどん溺れちゃって下サイ旦那。
そしてそうか…エロコックなのか…そうか…(帰ってこ〜い。汗)
八木橋様ありがとうございマシたv
→2005ゾロ誕
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