確かに今日は無礼講だと言った。
言ったがなんだこりゃコノヤロウ!!!
『シミになるだろが!』
「テッ、テメェら…っっ!!」
コックの皿を持つ手が怒りにブルブル震えた。
次から次へ消えてゆく料理を用意するのに忙しく、ようやくキッチンから出て来たとたんにコレだ。
十一月十一日。
未来の大剣豪様の誕生日である。
数日前から準備した祝いの席。
始める前に、無礼講だとは言った。
普段はやかましい航海士もコックも。
だからってこの惨状は如何なものか。
船長と船医はどこから持って来たのか妙な衣装を着て踊り狂っているし、狙撃手は何やら怪しげな小道具を使ってテーブルに並べた酒の空き瓶を狙い撃ち。
この三名、もちろんとっくに出来上がっている。
まだ素面と思われる航海士と考古学者は少し離れた場所に避難してチェスを楽しんでいた。
本日の主役、剣豪様はと言うと…
「どうしてくれんだコレ!!!」
コックに叱られていた。
料理を運んでいたが故の悲劇なのだがそのおかげで両手はふさがっていたわけで。
つまり傾いた瓶を避けられなかった。
スーツのスラックスから白いシャツから台無しにしたのは赤ワイン。
今すぐ脱いで洗わなければマズい。
「あ〜…スマン。」
謝りつつも女じゃあるめぇしギャーギャー言うなよなんて煽る言葉。
暴れるルフィを避けてテーブルに激突したゾロのおかげでサンジはワインを浴びたわけだ。
直接の原因は別の人物にせよ、被害を受けた彼が喧嘩を売られる謂れはない。
「ギャーギャーだとっ?!」
スーツに拘りのあるサンジにしてみればとんでもない事態だ。
眉間に深い皺、額に青筋。
が、爆発寸前でちょっと待てと耐える。
今日は「特別」な日だ。
いくらなんでも主役を蹴り飛ばすわけにはいかない。
大きく深呼吸。
「…とにかく、着替えて来る。」
そうやって、とりあえずは収めた。
のに。
「何で。」
すぐ乾くだろ?
首をかしげてもちっともかわいくない緑頭が斜めに傾く。
せっかくひっこめた怒りだったがそれも台無し。
「アホかテメェはっ!!」
蹴り飛ばすのは耐えたにしろ、怒鳴りつけてしまった。
だっていろいろあんまりだ。
「こんままじゃシミになんだろが!!」
けれどゾロの目は『だから何だ』と語っている。
通じやしない。
その事に気付いたサンジは時間の無駄と溜め息を吐き額に手を当てた。
そしてもうひとつ、気付いたこっちはマズい事。
今朝洗濯をしたばかりで着替えがない。
暫し考え振り返り、項垂れる酔っ払いに呼びかけた。
「オイ、ウソップ。オレ全部洗っちまっててさ…オマエの服貸してくんねぇ?」
普通に考えて、女性陣にはお願い出来ない。
かと言って船長の服はちょっとサイズ的に小さい。
おまけに長く洗ってないようなのでなんとなく嫌だ。
身長的には合う剣士に借りるか?と一瞬考えたがどうにもあのセンスが嫌だ。
船医はあからさまにサイズが合わないし…
となると狙撃手に借りるのが妥当だろうか。
そんなわけでお願いしてみたのだが本人の返答より先に、意外なところから待ったがかかった。
「サンジ君ダメよ。」
「え?」
声の主は航海士。
「ナ、ナミさん?なんで?!」
今にも泣き出しそうな表情で目を向ける彼に、丁度手に取ったクイーンを移動しながらにっこり。
「なんかエッチくさいからダメ。」
彼女の目の前でロビンも頷き小さく笑った。
鎖骨やら肩、腕まで丸出しになるわけだから、普段きっちり着込んでいる彼に対してまぁ分かる意見。
要するに露出度の問題。
なのだが本人さっぱり分からない。
けれどなんにせよ、言い切った状態のナミに逆らえるはずもない。
つまり残る選択肢は二つ。
ゾロかルフィ。
なんとなく、サンジ的には究極の選択。
暫し考え、あの何かが透けちゃいそうな白シャツ(だってあれしか持っていないのだ)を着るよりマシかと船長の名を呼びかけハッとする。
そういえば今日自らの服を洗う時、一緒に彼の分を洗いはしなかったろうか。
嫌な汗が背中を伝った。
もはや選ぶ余地はない。
これ以上時間の経過を許すわけにもいかず、諦めて本日の主役へと気を移す。
と、いつの間にか席を外していたゾロが無言であるものを差し出した。
「これ着てろ。」
見覚えのあるものがキチンとたたんである。
意外とマメだなぁとか関係のない事を考え、またハッとする。
たたまれた布の間からちらりとのぞく緑色。
見間違うはずのない、それ。
「えっ…と、服、な。うん。じゃ、じゃあこれだけ…ありがたく…」
たたまれたそれらの一番上と下だけを受け取ろうと手を伸ばすが、その手はすいと避けられてしまった。
サンジはまとめて押し付け全部受け取らせようとする男に両の掌を向ける。
「いや待て!待ってくれ!!ハラマキだけは勘弁してくれ!!」
黒ズボンはいい。
白シャツもまぁなんとか…
だがそれだけは!!
それっっっだけは勘弁してくれ!!
必死の形相で断るが、ゾロは無言で首を横に振る。
「何でだよッ!!」
許してくれるつもりはないらしい。
ぐいぐいと押し付け
「一式着ろ。」
有無を言わせない。
「いやなンで?!オマエのその拘りは一体なんなの?!」
いっこくらい、省いたっていいじゃねぇか!!
緑色の腹巻片手に押し問答。
なんとも滑稽な図だ。
酔っ払い三名は意味も分からず爆笑している。
自然、上がったボリュームに
「はいはいソコっ!!うるさいわよ!」
ナミが立ち上がった。
つかつかとサンジに歩み寄り
「別にいいじゃない。サンジ君着たげたら?」
簡単に一言。
「でっ、でもナミしゃん〜…」
情けない声で眉を下げるがそれでも容赦ない。
「だって今日ゾロの誕生日よ?それっくらい、いいじゃない。」
「う…っ…」
確かにその通りだ。
けれどすごくもっともな事を言ってるっぽいが目が笑っていた。
…
絶対におもしろがっている。
かと言ってそれでも彼女に逆らう事が出来ないのがサンジだ。
彼はしぶしぶ身に着けた一式のまま残りを過ごす事となった。
「ひでぇ目に合ったぜ…」
夜中になり、ようやく片付きタオルを持って風呂場に向かう道すがら、思わず零れる本音。
借りておいてひどい言い草ではあるが仕方ない。
着替えて戻るとなんとコメントして良いか迷う面々やその空気に随分居たたまれない思いをした。
おまけにそのままうろちょろするハメになったわけだから堪らない。
何故たとえスーツをダメにしても、断固拒否しなかったのかと後悔すらした。
そのなんだかとっても似合わないこれらをようやく脱げるかと思うとそりゃあもぉ、清々する。
と言ってもまだ着替えは乾かないのだが。
当然風呂から上がってもまたこれらを着て眠る事になる。
ちょっとうんざりしないでもないが、人目(主に女性陣の)がないだけマシだ。
朝になれば乾いて着替えも可能だろう。
小さく溜め息を吐き、風呂のドアに手をかけ開くと目に入る裸足の指先。
え?と顔を上げた瞬間。
風呂の浴槽にマッパで腰掛けた人物の中心から、何かが飛んで来た。
白く粘ついた、液状のもの…
ベッタリとシャツやら腹巻に付いた見覚えのあるそれに、とにかく叫んだ。
「ぎゃーーーーーーっっっ!!!」
いかにもシマッタという表情で固まるのは未来の大剣豪様。
くどいようだが全裸だ。
「な、な、何考えてやがる!!」
暫く見かけねぇと思ってりゃ鍵もかけずにこの馬鹿野郎は。
「スマン。いや、なんかテメェの見慣れねぇ格好見てたらつい…」
謝ったのは飛ばした事に対してらしい。
たった今投下した爆弾発言やとんでもない行為に対する謝罪ではないようだ。
それにしたってあんな格好にもよおせるなんて相当である。
「…ってオカズはオレかよっ?!」
言われた内容の理解に随分と時間がかかってしまったのだが、サンジには時間差でキたらしい。
普通に考えてありえない事態なので。
「変態はお断りだっっ!!」
何を断っているのかさっぱりだがとりあえず断ってみた。
当たり前だが非常に混乱している。
そして
「とっ、とにかくシミんなる!!早くなんとかしねぇと…」
やっぱり気になるのはそこらしく、オロオロと裾をつまんでシャツだけでもと脱ごうとした。
が、ゾロはその手を掴んで止める。
「なんだよ早くなんとかしねぇと…」
「テメェ他に着るもんねぇだろが。」
頼みの綱であるウソップの服はナミに止められている。
おまけに本人、気持ちよくお休み中。
叩き起こすなんて鬼のような事は流石に出来ない。
「いや、んな事言ってる場合じゃあ…タンパク質はシミになるんだって!!」
毛布に包まるなりしてとにかく洗わねぇと服が!
こんな場所にあるわけはないのにあわあわ毛布を探しだすが、その努力(?)も虚しく
「かまわねぇよ。どうせ自分で出したもんだ。」
それ、オレの服だしな。
…
またとんでもない発言。
この男に羞恥心というものはないのか。
よりによって自己処理したもので汚れたと言うのに。
しかも真っ最中(?)を見られている。
本人平然としているが、サンジの方がなんだか居たたまれない。
その上目の前の男は未だに全裸だ。
それだけならまだしも状態はまだ…
…
タオルで隠すなり、何かあるだろう。
呆然と立ち尽くしていると
「とにかくそんまま着とけ。」
強引に腕を掴んで引き寄せられた。
「なんで?!」
体制を崩しながらもされるがままに近寄るサンジはまだわけが理解っていない。
揺れる蒼に口角を上げたゾロは
「どうせすぐ脱がす。」
しゃあしゃあとそんな事を言い放った。
今脱いじまったら
「楽しみが減るだろが。」
end
またなにやらふざけた内容になってしまいマシた…
すっ、すいませ…っ(大汗)
でもシミに〜って聞いたらこっちに取っちゃいマスよね?ね?!
…
カッコいいゾロは書けマセんデシた。←しかもヘンタ…誕生日なのに(涙)
タイトル下さった方(ありがとうございマスv)いろいろヒドくてすいません〜(泣)
※DLF期間終了致しマシた〜
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