最近背後からの視線に振り返ると大抵、


クソ剣士が見ている。








「勘違いとカンチガイ、

         足して二で割ると何になる?」









オレは基本的にウソップが好きだ。
話が合うし、何より『いい奴』。
キノコを避けやがるのは許せんが、元々器用に出来てるヤツの手はオレから言わせりゃまさに魔法の手だ。
火力調整から芋の皮剥きまでそつなくこなす。
ちょっとばかし前、次の島で材料購入してオーブン作ってみるかなんて嬉しい提案もしてくれた。
そんなわけでオレはヤツが大好きだ。
自然話す事は多くなるし、近くにいる事も多くなる。
と、最近必ず、だ。
背中に感じるクソ腹巻毬藻ヘッド剣士(テメェで言っててなんだが長ぇよこのヤロウ)の視線。
気づいた頃は
「何ケンカ売ってやがるあのヤロウ!」
と思ってたがどうも違う様子。
そしてオレはある結論に達した。
あれは嫉妬の眼差しじゃねぇのか?!
て事は、だ。
ヤツは気があるワケだ。



ウソップに。



我ながら素晴らしい推理だぜ。
オレってあったまイ〜




どうにも賢くない感じに脳内で自画自賛中のコックは何やら怪しげな赤い液体をフラスコに注ぐウソップの隣にしゃがみ込んでいた。
ぺったりとくっつき覗き込む。
もちろん彼に他意はない。
あるのは見たまま
「天気もいいし、今日は外でやっか!」
とメインマストに器具を立てかけ、始めた実験への好奇心、だ。
幸いおやつの準備までは時間があるし、洗濯は彼とチョッパーが手伝ってくれたおかげで午前中に片づいた。
「なぁその液体なんだ?入れっとどうなるんだ?」
興味津々である。
料理人とは「好奇心」、「探究心」が強いものだ。
逆にそうでなければ勤まらない部分あり。
まぁつまりは発明家気質のウソップとは似たもの同士。
気が合わないわけがない。
そんな具合に航海中の平和な時間は一緒に過ごす事が多かった。
この日も普段と違わずで許す限り近くにいる。
それから何日か敵襲はなし、嵐も来ずの穏やかな日が続いたがその間も変わらず。
けれどあの結論に達した日以降ウソップの傍に張り付くのは半分、ワザとだ。
何故と聞かれたところでサンジにはそれに丁度良い答えなど用意出来なかったが。

ゾロの方はと言えば、送る視線にサンジが憶測するような『嫉妬』と言う意味合いはなかった。
少なくともその時点では。
こちらはこちらで最近の彼らの行動を見ているうちにある結論に達していた。



コックはウソップが好き。




ある意味正しいのだが微妙にマチガイ。
『色』を含んだものととらまえていたもので。
「ヤロウに手厳しい暴力コックにしてはやたらと好意的だ。」
と彼らの様子はそんな風に映っていたから。
自他共に女性至上主義であるサンジが聞いたら蹴り殺されそうな方向への勘違い。
普通に考えてみろ。
そんなワケがないだろう。
ただ、ゾロはそう考え出した頃からもやもやした感情を抱くようになっていた。
コック、サンジに対して。
普段自分とは寄ると触ると乱闘を繰り返している彼がウソップ相手にだけ何故ああなのか。
そんなちょっとした疑問から始まったコック観察だったのだが、誰といるより楽しそうな様子になんだかもやもやした。
ナミやロビンに対してあんな風なのはいつもの事で、それに関して呆れる以外に何も感じた事はなかったのだがこの件に関しては違う。
どうにも、もやもや。
で、達した結論。

「コックはウソップが好き」

サンジの態度の理由に予想がついてスッキリしたかと言えば、違った。
逆にもっともやもや。
と言うよりもなんだか…
イライラ?
じゃあ見るのをやめりゃあいいのにやめられやしない。
何をどうしたいわけでもないくせに、やめられないならばと開き直って意地になる。
予想をつける以前よりもっとずっと、彼らを目で追うようになってしまった。
見られて不快になりゃあいい。
で、だったらと離れれば…
いい?
サンジはサンジでその視線がウソップに張り付く自分への『嫉妬』だと勘違いし、これでもかと益々ウソップに張り付くようになる。
本人たち互いに遠まわしな嫌がらせのつもりらしいが傍から見ればただの意地の張り合い。
一体何がしたいのか。
その事実に最初に気付いたのは当事者であるはずだったのに、いつの間にか蚊帳の外なウソップだった。
だってよく考えてみろ。

彼らはある意味互いの事しか考えていない。

それに気付いたからと言ってそんな事、彼にどうにか出来るはずがなかったのだが。
言ったところで素直に認めるわけがない。
どっちも。
どうしたもんかと考えているうちに日は過ぎ、うまい具合に状況は整った。
島に到着し、ウソップが船番の午後、同時に船に戻ったのだ。
剣士とコックが。
いい機会だと最近の彼らの態度について持ちかけようと口を開きかけたとたん、先にサンジが爆発した。
「んだテメェいい加減にやしがれ!!」
まず甲板に立つ彼らの位置。
メインマストにもたれて腕組みし、キッチンのドアの方を向いたゾロ。
と、その正面に立ちゾロに対して口を開こうとしていたウソップ。
と、キッチンに買出しの荷物を運び込み、いつものごとくウソップに張り付こうかとドアを出て来たサンジ。
こんな感じだ。
キッチンから出て来たサンジとそこを見ていたゾロの目が合ったらしい。
で、ウソップの背後から怒鳴り声。
「気に入らねぇならハッキリ言ったらどうだ?!」
毎度毎度じろじろ見てきやがって!!
キレたのはサンジ。
最近のイライラが抑えきれなくなったらしく、爆発。
ちなみに今から向かおうとしていたくせになウソップはあっさり素通りで微動だにせずなゾロの正面へズカズカと。
「何をだ。」
対する男は不機嫌そうに尋ねる。
いきなり怒鳴られる意味がさっぱり分からねぇ、と。
サンジがウソップのところに来るであろう事を予測し、その通りに行動しかけた事にイラついて怒りは露。
見られている事にイラついたのか。
怒鳴られた事にイラついたのか。
どっちもどっちである。
ウソップは溜め息を吐いた。
さてどう説明してやろうかと。
だがそんな彼の苦悩はおかまいなしで、言い争いは激化。
「丁度いい!今この場でハッキリ言ってみやがれッ!!」
ウソップの目の前で!
怒鳴りながら、サンジは一歩、踏み出した。
「だから何をだ!!」
意味が分からん!
ゾロは組んでいた腕を解く。
「とぼけんな!もういいオレが言ってやる!!」
白い手がぐいと白シャツの胸座を掴んだ。
「あぁ?!だったらこっちも言ってやる!」
剣だこのあるごつい手がネクタイを掴み上げる。
大きく息を吸い込んで、同時に開かれた口。

「「テメェ好きなんだろうが!」」





「「ウソップの事!!」」





互いに叫んだ声は区切りから何からそれはもう、キレイに重なった。
「…」
(あれっ?)
「…」
(…?)
暫しの沈黙。
ウソップはもう何をどうして良いやらで呆然と立ち尽くす。
けれど最初に口を開いたのは現時点にて比較的冷静な彼だった。
「…あのよ…オマエらなんかひでぇ勘違いしてねぇか?」
ガックリと肩を落とし項垂れる。
「言おう言おうと…思いつつだな、何時言うかずっと、考えてたんだが…」
ぽつりぽつり言いながら、鼻先を掻いた。
「あ〜…つまりだな!オレは『当て馬』ってこった。」
顔を上げた彼の口から出たのはつい今しがた、衝撃の告白を受けた人物の台詞ではない。
「「…どういう意味だ。」」
またもタイミングと言葉を同じくする二人に
「…分かった心優しいウソップ様が無知なオマエらにこれを貸してやろう。」
まったく手のかかる奴らだ。と。
怒らせるといろんな意味で恐ろしいこの二名に向かって、こんな口をきけるのはおそらく彼くらいだろう。
どこから取り出したのかほいと寄越した分厚い塊を、サンジが受け取った。
「んだコレ。」
問いかけるが答えずウソップは背を向ける。
「よぉく考えてみろ。」
それだけほおって、さぁ〜てルフィが戻ったら一緒に釣りでもすっかな〜なんて呟きながら退散。
その意味も分からずでとりあえず、手の中の塊に目をやるとどうやらソレは本らしい。
「アイツ何寄越したんだ。」
ゾロはパラパラとページをめくるサンジの傍へ寄って覗き込む。
さっきまでの一触即発は一体どちらへ?
揃って真剣に見詰める先にはある言葉の意味。
ウソップが寄越したのは辞書だった。



【当て馬】
・相手の出方を探るために、仮に表面に立てる人



この場合、彼の言うところの「相手」とは今それを見ている「互い」である。
表面に立てられたのが、自分。
つまり。

つまり?





サンジは仮にゾロがウソップに気があったとして何の不都合があるのか、もっとハッキリ言うと何が気に入らなかったのか、根本的なそこんとこをよく考えてみるべきである。



ゾロは何故彼らを、いや正しくはサンジを見るようになったのか、その理由を、見ていて感じたもやもやのワケを、キチンと考えてみるべきである。





end





いつもの事ながらじれったいデス(大汗)
カヲリ様からいただきマシたリクエスト、「ナチュラルに仲いいウソサンにヤキモチ焼くゾロ(デキてない設定)」デシた。
お、お題に沿えてマスかね〜…
あっ、でもこれじゃあどっちもヤキモチ…デスよねぇ???
あれっ、なんか違いマス?
ごめんなさいごめんなサイぃ〜(涙)
でも本人は書いてて楽しかったデスv
カヲリ様、ありがとうございマシた〜vvv



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