最近なにやら小動物たちがキッチンに篭っている。

「チョッパーこれどうするよ。」
丸窓からはチョロチョロ動き回る黄色い頭がよく見えた。
「この葉は裏ごししないと繊維が多いから…」
カタコト何やら取り出す音。
「ふぅん…じゃあこうして…」
続いてゴリゴリ擂る音。
「だな!!」

随分楽しそうだ。
最初のうちはのんびり一緒にキッチンに入っていく様を眺めていたり、会話を聞き入ったりしていたのだが日が経つにつれてどうも気に入らない。
それもそのはず。
だってこの様はここ二週間ほど続いているのだ。




hungry?





緑の毬藻頭、腰に腹巻三本刀の剣士はイライラと日々の鍛錬用串団子を振り回していた。
今日も変わらずコックと船医はキッチンに篭ったまま。
自分にはまったく構ってもらえない。
晩になりキッチンへと向かってみても酒とつまみをほいと寄越したら知らん顔でノートとにらめっこ。
なにやらレシピをまとめるのに夢中な様子で、何してんだとちょっかいを出してみれば叱られる。
「今忙しんだ後でな。」
なんて軽くあしらわれてしまう事多々。
まるでガキ扱いだ。
それも気に入らない。
かといって喧嘩を売ってみても無駄だった。
「だから忙しいってんだろが後にしろっ!!」
強く拒否。
で、言葉通り「後」かと言うとそうはならない。
サンジは自分で言っておいてキレイにそれを忘れてしまうのだ。
やっぱり気に入らない。
関心が向いていない証拠だ。
ではどうしろと言うのか?
答えは簡単。
ゾロ的には「今すぐかまえ!!」だ。
だが問題はコックのその態度だけではなかった。
最近の彼の傍らには必ず船医の姿。
もう四六時中ベッタリだ。
元々コックに懐いているチョッパーだったがその頃の比ではない。
とにかく一緒に行動していて、四日ほど前に寄った島でも剣士の役目であるはずの買出しには彼がついて行った。
気に入らない。
大人気なく邪魔をしてやろうかなんて考え割り込むと容赦ないコックの蹴り。
術もなく、毎度すごすご去るしかない。
同じように蹴り出された船長に
「おっ、ゾロ、オマエも追い出されたのか。」
なんてしししと笑われたりもでそれも気に入らない。
コックにとってある意味特別な位置にいるはずの自分がつまみ食いをしてしょっちゅう蹴り出されているルフィと同じ扱いを受けているのだ。
そりゃあ気にも入らないだろう。
なんだか意地になってきたゾロは食事時以外中にさえ入れてもらえなくなったキッチンを丸窓から伺った。
なんとも情けない姿であるが、これでも未来の大剣豪である。

中ではコックと船医が並んでシンクに向かっていた。
チョッパーは小さいままで、届かないので椅子に立っている。
当たり前に不安定なそれを気遣いコックがしょっちゅう船医の肩に手をやっていたりした。
(クソッ、あんま近寄んじゃねぇ!)
元々隠す事を知らないゾロの心中は更に正直だ。
キッチンの壁はあまり厚くないのでぴったりと耳をつけると声まで聞こえる。
となればそりゃあもちろん耳までつけちゃうだろう。

情けない事この上ない。
だが今のゾロはなりふりなどかまっていられなかった。
「おいチョッパー味こんなもんでどうだ?」
なんて言いながらサンジがスプーンを差し出す。
チョッパーは当然のごとくそれをぱくんと口に含んだ。
(あっ!!んな事オレだってされた事ねぇぞ!!)
「うん、いい感じだ!」
されてみたいプラス食ってみたいで眉間にむぅと皺が寄る。
こんな姿、航海士に見られようものなら一生ネタにされるだろう事間違いない。
「サンジ、これはどんな風にする?」
言いながら横を向いた拍子によろけた船医はひしとコックの腰にしがみついた。
「大丈夫か?」
「うっ、うんごめん。」
(チョッパーのやつヘンなとこ触ってんじゃねぇよそりゃあオレんだ!!)
勝手な事ばかりを考えつつ頭は湯立つイキオイだ。
結果、様子を伺ったはいいが益々イライラを募らせただけであった。

そんな状態が続き剣士のイライラも頂点に達した頃、事件は起こった。

剣士が少々(少々どころかかなりなのだが)イラついている事に気付いていたチョッパーは彼なりにゾロを気遣ったのだろう。
買出しのついでに一本の酒を購入し、それを届けに行ったのだ。
だがゾロは照れくさそうに差し出されたそれを払いのけた。
「…いらねぇ。」
チョッパーは酒の瓶を抱えたまま目を丸くする。
戸惑いながらも
「え、でも…」
渡そうと手を伸ばす彼に
「いらねぇっつってんだろ!!テメェはいつもみたくコックにひっつきまわってやがれ!!!」
とうとう、言ってしまった。
見る間に変わる船医の表情。
怒鳴られた動揺が見てとれる。
その場で固まった彼によけい苛立ち、八つ当たりだと分かっていても自分では止められない。
しまったどうすればと考えたその時、背後から鋭い蹴りが来た。
「テメェ…何チョッパーに当たってやがる!いい加減にしやがれ!!」
一部始終見ていたサンジが怒鳴る。
すんでの所でかわしたゾロの苛立ちは瞬時に方向を変えた。
「元はと言やテメェが…っっ!!!」
言いかけ、言おうとした言葉に驚く。
どうしようもない苛立ちに抜いた刀をだらりと肩ごと下ろした。
「?…んだよ。」
先程までとは明らかに違う様子に不機嫌な表情のまま、振り上げた足をぴたり止める。
剣士はそこでようやく気付いたのだ。

自分が、『嫉妬』しているという事に。

呆然と立ち尽くす。
今までこんな感情は必要なかったし、知らなかった。
初めて自覚したそれに少なからずショックを受ける。
自分はこんな男だったろうか?
ハッとしたゾロは振り返り、慌てて背後のチョッパーと向き合った。
そして。
「スマン!!」
明らかに自分が悪かった、と即行で頭を下げる。
「つまんねぇ事で、イラついてた…」
ごにょごにょと言いにくそうにだが、きちんと。
先程の酒もありがとなと受け取る。
受け取りながらちらと視線を向けると剣士の言うところの『つまんねぇ事』に思い当たったコックは突然耳まで真っ赤に染めた。
「こンのクソ腹巻が…っ!来い!!」
ぐいぐいと耳を引っ掴んで強引にキッチンへ。
何が起こったかよく分からないゾロはされるがままに連れて行かれ、すとんと席に着かされた。
「なっ、なんだ?」
ようやく現状を把握したのかやっと口にした疑問。
「いいからちっと待ってやがれ!!」
しかしコックは有無を言わさずでビシッと指差し男をその場に釘付けた。
おとなしく従いシンクに向かう彼の背中を眺めていると、いくらかして目の前に湯気の立つ皿が並べられた。
出来上がってきたのはしょっちゅう怪我を増やして来る流血マニアの剣士用。
免疫力を増強し、新陳代謝を促進する薬膳料理。
このところ船医とともにキッチンに篭ってなにやらコソコソしていたのはこの為だったのだ。
「オレよりチョッパーのが薬草に明るいからよ。ご指南いただいてたってわけだ。」
なるほどと納得し、目をやる見目も美しい料理たちはあたたかな『気』を放つ。
「で…」
とりあえずの説明を終えるとサンジはゆっくりとタバコの煙を吐いた。
「分かったかこのクソ毬藻!!」
すかさず飛んで来る膝蹴り。
「んなしょうもない事でチョッパービビらしてどうすんだ!!アホかテメェはっ!!!」
ゾロは顔面を狙ったそれをひょいと避け、箸を握る。
「いただきます。」
呪文かなにかのようなその言葉を合図に、コックは追撃する事をやめた。

「足りたか?」
穏やかな問いかけに
「足りたがテメェは足りてねぇ。」
当然のごとく尊大に、即答。
だが想い合う相手のあからさまなソレが嬉しくないはずはない。
口元に笑みをのせ
「…ったくどうしようもねぇな…」
呆れつつ、伸ばされる腕。
変わらず全てを包み込む、やさしく、あたたかいもの。
ようやく触れる事を許してもらえたゾロは二週間とちょっとぶりの金糸にゆっくりと口づけた。
自覚したのは非常にやっかいな感情。
だが、
「たまにゃこんなんも悪くねぇ…」
そんな風にも思ったり。



end





設定、チョッパー絡みの薬膳料理という事でこれももっち様よりいただきマシた♪
しかしただのアホ甘に…(涙)
すいませんすいません(大汗)
そしてゾロ壊れすぎ???
しかもかなりのお子様…っ…←大人気ない事この上なし(苦笑)

モリカワにはカッコいい旦那は書けないようデス…
て事でもっち様からいただきマシたリク、「やきもち剣豪」デシたv
もっち様、ありがとうございマスvvv



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